喜びをあなたと一緒に
「あの、料理代を払わせてください。やっぱり申し訳ないし。」
助けてもらってばかりなのが、嫌だった。
「じゃあさ、絵が描けるようになったら、ここのカフェに飾る絵を依頼させてよ。もちろん料金は払うからさ。あ、あと君が描いた絵を見たいな。」

こんな調子で、絵を描けるようになる日はくるのだろうか。
不安はあるが、彼の期待に応えたいと思った。

企業のキャラクターや、SNSのアイコン、小説の表紙など、自分がこれまで描いてきた絵を彼に見せた。

イラストを見ると、その時の思い出も蘇ってくる。
クライアントと何度も打ち合わせを重ねたこと。
何度もリテイクを繰り返したけれど、そうして出来上がった作品は唯一無二のものとなり、とても喜んでもらえること。
話しているうちに、自分でも何が言いたいのか分からなくなったが、思いつくままに喋った。

喋っているうちに、段々と笑顔になっていた。
「楽しそうに話すね。君はさ、もしかしたら絵を描くことが好きなんじゃなくて、絵を使って人を喜ばすことが好きなのかもしれないね。」

ハッとした。

そして、アートギャラリーで見たシーンを思い出す。
自分の作品を喜んでもらえて、嬉しそうにしていた作家さん。
あのシーンが魅力的に写ったのは、自分も誰かに喜んでもらえることをしたかったからなのかもしれない。

自分のやりたいことにグッと近づいたような気がして、胸が高鳴った。

その興奮のままに、聡真さんに伝えていく。
気づくと、聡真さんとの距離が近くなっていて、目の前に彼の顔があった。

数秒見つめ合う。
聡真さんの顔が赤くなっていく。
私の鼓動もどんどん早くなっていって、何かが起こりそうな予感がした。
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