喜びをあなたと一緒に
ガタン。
聡真さんは急に立ち上がった。
そして、キッチンに行き、何かを作り始める。

しばらくしてカップとソーサーを持って戻ってきた。
中身はカプチーノで、美術館のカフェで見た歪なニコちゃんマークが描かれていた。

「実はさ、あの日、美術館のカフェを手伝ってたんだ。西洋画展がやってたでしょ?だから、カフェでも西洋の味を提供しようってことになって、イタリアで修行した経験がある俺に声がかかったの。1日だけだったけどね。」

だから、聡真さんはあの日美術館から出てきたのか。
今まで、美術館と聡真さんが結びつかなかったけど、そういうことだったのかと納得する。

「せっかくだから、休憩時間に美術館の中を観て回ったんだ。そしたら、君を見つけたの。美術品を観る君は、瞳を輝かせたかと思ったら浮かない顔をしたりとコロコロ表情が変わって、何でだろうって気になった。その後、カフェに来た君は、浮かない顔をしていたから、どうにかして元気づけたかったんだ。それで、普段はやらないラテアートをしてみたんだけど、ちょっと歪になってしまった。それでも君は笑顔を浮かべてくれて、とても嬉しかった。何かを頑張っている君を応援したいと思ったんだ。」

聡真さんが語る話は、私が知らないことばかりだった。
一番衝撃だったのは、ニコちゃんマークのラテアートが、聡真さんの描いたものだったということ。

私は、やっぱりいろいろなところで彼に助けられていた。「私、美術館に行ったら自分のやりたいことが見つかると思っていたのに、やりたいことがみつからなくって落ち込んでいたの。そんなときに、ニコちゃんマークをみて、へこたれてちゃダメだ。また明日頑張ろうって思えたんだ。ありがとう。」
そう言って、私はアートギャラリーで買ったニコちゃんマークのポストカードを聡真さんに手渡した。

聡真さんは、一瞬驚いた後、笑ってくれた。
「君は、僕にありがとうって言うけれど、僕だって君に感謝しているんだよ。僕の昔話、聞いてくれる?」

そう言うと、彼は静かに話し始めた。
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