喜びをあなたと一緒に
すっかり遅くなってしまったから、聡真さんがホテルまで送ってくれることになった。
ホテルと聡真さんのカフェは数十メートルしか離れていないのに。
聡真さんは、心配性なところがある。

店を出ると、聡真さんの視線が椅子の上の植木鉢に移った。
つられて、私も一緒に植木鉢をみた。

淡い黄緑色の花が、下向きに咲いている。
聡真さんは、しゃがんで花と目線を合わせた。

「この花、バイモユリって言うんだけど、祖母がくれた花なんだ。うつむいて咲いている姿が謙虚で好きなんだけど、なんだか君みたいだなと思って、今はもっと好きになった。ありがとね。」
私も、しゃがんでその花をじっくりと見た。

この花が私みたいでもっと好きになった。
聡真さんが言ってくれた言葉を、頭の中で何度も繰り返した。
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