小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第29話 死線上の恋(2/5)


 目を伏せるシャオレイに、フェイリンの胸がざらついた。やがて、渇望する願いが、フェイリンの喉を焼く。
(あの男は、こんなにもシャオレイに想われているのか。
――ならば、この想いを向けさせたい……俺にも)
 フェイリンは気づきたくなかった感情を、ようやく自覚した。義兄《あに》という仮面を被り続ける自信は、彼にはもうなかった。

 フェイリンは震える指を抑え、優しい旋律を紡いだ。それは、彼の祖母に叩き込まれた曲だった。

 シャオレイがぽつりとつぶやく。
「慰めてるの……?」

「好きなように受け止めろ」

 シャオレイはほほ笑みながら、フェイリンの演奏を聞いていた。
(慰めてくれてるのよね、きっと)

「――ねえ、兄さんは琴はどこで習ったの?」

 フェイリンの指が一瞬止まった。
「……祖母だ。
武家はどうしても粗々しくなるからな。
せめて琴くらい覚えて、雅《みやび》にふるまえ――と」

「そうなの……珍しいわね」

「――求婚するときに、弾けと言われた」

 フェイリンの淡々とした声に、シャオレイは笑い声を漏らした。
「おばあさま、的を射ているわ。
確かに、兄さんみたいな手練れから求婚されたら、迫力に怯んでしまうもの」

 フェイリンの旋律がシャオレイ自身へ向けられているとは、彼女は思いもしない。
(俺が義兄妹の関係を始めたから、当然だ……)
 フェイリンは後悔を押し込めて、ひたすら弦を震わせ続けた。その旋律の裏に、言えない想いを隠したまま。

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