小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第47話 叶わぬ相思相愛(4/4)


 ミアルにはひどく、もどかしかった。
(足りない……足りないわ、こんなんじゃ全然。
焼き付けなくちゃいけないのに……この熱と感触を。
だってジュン様と愛しあえることは無いんだから……もう二度と)

 ミアルは、ジュンともっと溶け合いたい自分に気づいた。それと同時に、残酷な事実が突きつけられた。
(――いえ……ジュン様と愛しあったことなんてなかった。
一度も。
私たちは体しか繋がっていなかったし、心をいじり合っていただけ……)

 ミアルはやっと分かった。――ジュンがすさんでいた夜の翌朝、彼女自身がほのかに傷ついていた理由を。
 ミアルはもっと深くジュンと心を通わせて、彼と愛しあい、ひとつになりたかった。
 あの夜、ジュンがむき出しの弱さを見せてくれたから、それを期待してしまったのだ。
 だが、それが叶わなかったのが、ミアルには悲しかった。

(今の優しいあなたより、あの夜のあなたのほうが――好きだったの。
傷つき、私にすがるあなたが。
でもあのジュン様は、もう戻ってきてくれない。
――あなたは弱い自分がお嫌いだから)

 ”下僕《しもべ》”としてのミアルが、冷ややかにたしなめた。
(ひとつになれなくて良かったじゃない。
だってジュン様とそうなってしまったら、カナリア妃様と陛下を裏切るしかないもの。
ラン家は血を流しすぎる。彼らが政権を握ったら、内乱が起きるわ。
今の陛下が治めているからこそ、この平和があるのよ。
分かってるでしょう?)

 だが、”女”としてのミアルの悲しみは、治まることはなかった。
 窓の外では、風が木々の枝を揺らしていた。

 それが、ふたりを断ち切るような音に聞こえて――ミアルの胸はひどく痛んだ。

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