小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第62話 現実への引き戻し(4/4)


 だが、フェイリンはシャオレイを優しく追い詰めた。
「そなたを守るのは……俺だ」

 フェイリンのまっすぐな口調に、シャオレイの頬は熱を帯びた。
(私は陛下の妃なのに――)
 その確かなはずの感情が、ゆらいでしまったことに、シャオレイは気づいていた。


 フェイリンの鼻先を、シャオレイの淡い香りがくすぐっていた。フェイリンの独占欲が、燃え上がっていた。
(シャオレイを宮中なんかに戻したくない)
「今、俺がそなたを連れて逃げたら……どうする?」
 その言葉が、フェイリンの口をついて出た。

 シャオレイは、ハッとした。それから、自分が甘い空気に浸っていたことに気づいた。
(何をしてるのよ、私は……)
 シャオレイは「歩いてでも、戻るわ」ときっぱりと言った。

 シャオレイの固い決意に、フェイリンは「――冗談だ」と呟いた。

「……笑えない」
 シャオレイも、ぽつりと言った。

 ふたりの間に、沈黙が落ちた。
 さっきまで近づいていたはずの距離が――また、離れた気がした。
 ふたりはようやく山道を抜け、平原へと出た。

 シャオレイは馬上で、遥かかなたの水平線を見つめた。風が、シャオレイの熱っぽい頬を冷ます。
(私が陛下の元へ戻るのは、未練?義務?罪悪感?
それとも――まだ、陛下を信じたいから……?)
 シャオレイ自身にも、自分の本心が分からなかった。

「飛ばすぞ」
 フェイリンはそう言って、馬を駆けさせた。

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