小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第65話 かんじがらめの統治者(3/6)




 ゼフォンは、宮中にある刑部《けいぶ》へ足早に向かっていた。
 だが、頭にあるのはシャオレイの哀願だった。
(……あれは、処罰を恐れたカナリアの芝居だ。
錯乱しているカナリアは、予の怒りを恐れた。
あの男をかばい、予にそむいたのも、すべては錯乱のせいだ)
 ゼフォンはそう思い込もうとしたが、ゼフォンの胸の奥に、言いようのない痛みがうずいた。
 ゼフォンはそれをすかさず、怒りへと変換した。
(そうだ……すべてはあの男のせいだ)



 シャオレイは、瑶吟宮《ようぎんきゅう》へと戻されていた。
 清潔な衣へシャオレイが着替えると、まもなく、老女官たちがやってきた。

 老女官たちは、重々しく言った。
「陛下の命《めい》により、妃様の身体検査を行なわせていただきます。
下着をお脱ぎください」

 シャオレイはおとなしく下着を脱いだ。
(皇帝なら、疑って当然だわ)
 そして、シャオレイは今やっと気づいた。
 七夕の宴で誘拐されたシャオレイが帰還したあとに、シャオレイを愛撫したゼフォンの真意を。
(あれは、私の体を調べていたのね……。
そうよね、ミアルにも命じていたし……。
皇帝なら、当然よね……)
 あのときゼフォンは、ミアルへ密かに命じていたのだ。シャオレイが刺客と交わったかどうか――を。

 シャオレイは、のそりと寝台へあお向けになった。
 女官たちに脚を開かされる瞬間、シャオレイにやり場のない恥とみじめさが、涙と共に湧いた。
 だが――
(フェイリンのほうが、もっとひどい目に遭ってる……。
こんなの、大したことないわ)
 そう思ったら、涙が引っ込んだ。

 やがて、検査が終わった。
 老女官は、手を洗っている。

 シャオレイは無言で衣《ころも》を整えて、平然と言った。
「ご苦労様」

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