小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第65話 かんじがらめの統治者(4/6)




 宮中の端にある、薄暗く重い地下牢。そこに響くのは、したたる水音と、かすかなうめき声だった。

 磔《はりつけ》にされたフェイリンは、鞭打ちを受けて血まみれでぐったりとうなだれていた。
 フェイリンの髪からは色が抜け、白髪《はくはつ》があらわになっている。
 フェイリンは急に冷水をかけられ、首をわずかに持ち上げた。フェイリンの目に映ったのは、拷問官ではなくゼフォンだった。

 ゼフォンはシャオレイの身体検査の結果を待たずに、フェイリンの元へ来た。ゼフォンの怒りは、頂点に達していた。
「ビン・ユエン。妃に、触れたか?」
 ゼフォンの声は、静かだった。だがその瞳には、怒りの炎を宿していた。
「予の妃が”転生””前世”などと言い出したのは、貴様に汚されたせいだ。
貴様のせいで、利発なカナリアは錯乱したのだ……」

 それを見て、フェイリンは思った。
(転生……?前世……?何のことだ?
そんなことよりも、俺がどう答えても、こいつは信じない。
”触れた”と答えれば、俺は即死罪だ。
だが、”触れていない”と答えても、嘘とみなされる。
――そうなれば、こいつの怒りはシャオレイに向かう)
 フェイリンは、慎重に口を開いた。
「陛下にお答えする言葉は、私にありません」

「何だと?」

 フェイリンは口を閉ざした。彼にとって沈黙こそが、シャオレイを守るすべだった。

 ゼフォンの手が、拷問官の持つ鞭を奪った。

 ためらいもなく振り下ろされるゼフォンの鞭が、フェイリンの肉を裂く音を響かせた。
 フェイリンは歯を食いしばり、声をあげなかった。

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