小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―

第66話 紙切れ1枚の別れ

第66話 紙切れ1枚の別れ(1/5)




 紫微殿の執務室には、礼部尚書《れいぶしょうしょ※》、刑部尚書《けいぶしょうしょ※※》、諫議大夫《かんぎたいふ》が集められていた。[※儀礼・教育・外交をつかさどる長][※※刑罰と司法をつかさどる長]

 ゼフォンは開口一番、告げた。
「本日、後宮において規律を乱す一件があった。
カナリア妃が、予に無断で宮廷の外へおもむき、男――ビン・ユエンを伴って帰還した」

 臣下たちは、無言で目を見開いた。

 ゼフォンは、顔色ひとつ変えずに続けた。
「予はこれを重く見て、妃より封号を剥奪し、冷宮へ送る。
ビン・ユエンには、杖刑100打を命じる。
先の謀反により、ただでさえ宮中の秩序が揺らいでいる。
規律を立て直すためにも、迅速な処分が必要だと考えた。
――異論はあるか?」

 臣下たちは静まり返っていた。

 皇帝が一気に結論まで述べた――それは、通常の会議ではありえないからだ。

 礼部尚書と刑部尚書が、互いに目くばせする。

 妃と男の間に何があったのか、その詳細をあえて問う者はいなかった。なぜなら、“皇帝と妃”の、私的な事情に踏み込むことになるからだ。

 諫議大夫だけが、職務として釘を刺した。
「それは、私情なき決断にてございますな?
カナリア妃は、かねてより忠義深くございました。
陛下におかれては、この措置は本当に“秩序”のためとお考えに?」

 ゼフォンは、一瞬だけ沈黙してから回答した。

「寵妃とて、例外ではない。
後宮に私情を持ち込めば、いずれ政《まつりごと》が乱れる。
ゆえに、例外は許さぬ」

「皇后殿下にも、後宮の管理不届きの責任があるのでは?」

「――皇后に勅命を下す」

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