小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第66話 紙切れ1枚の別れ(4/5)




 紫微殿の裏の外廊下に、冷たい風が吹いていた。

 その一角でゼフォンはひとり、盃を手にしながら夜空を見つめていた。

 そのとき、室内からチャオ内侍の声が聞こえた。
「陛下。宰相が、面会を求めております」

 ゼフォンはわずかに眉をひそめ、「通せ」と返した。

 間もなく、宰相が静かにゼフォンのもとへやってきた。

 ゼフォンは、空を見つめたまま、宰相を見ようともしなかった。

 宰相は一礼し、わずかに間を置いてからたったひとこと、口にした。
「陛下のご裁決、まことに英明でございます……」

 ゼフォンのまなざしが、一瞬険しくなった。

 だが、宰相は再び一礼し、静かに去っていった。

 ゼフォンは、盃を握りしめていた。
 次第に、震える指に力がこもり――次の瞬間、盃を石畳へ叩きつけた。

 盃が砕ける鋭い音が、冷えた夜気にこだました。

< 329 / 417 >

この作品をシェア

pagetop