小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第67話 冷たい檻(5/5)
◆
冷宮は、日当たりの悪い場所にあった。その空気は、湿って重い。
シャオレイが冷宮の門をくぐると、瞬時に刺すような視線を感じた。
ここにいる廃妃たちが、窓や扉の隙間から、新入りのシャオレイをじっと観察しているのだ。
苔むした石畳に、裸足のシャオレイは滑りそうになった。シャオレイには靴も支給されず、囚人同然の扱いだった。
だが、シャオレイの頭の中にあったのは、ひとつの考えだった。
(あとはここで自害するしか、フェイリンを助けられない……)
◆
シャオレイに用意された部屋は、想像以上に荒れ果てていた。
カビ、湿気、古い血のような、混ざりあったにおいがする。
天井の隅には蜘蛛の巣があり、梁からほこりの塊が垂れていた。
ひび割れた壁は、ところどころに穴が開き、すき間風が流れ込む。
床板は、歩くたびにぎしぎしと音を立てた。
寝台は黒ずんでいて、染みの広がる薄い毛布が掛けられていた。
部屋の隅には、ほこりまみれの卓と椅子が置かれている。
宦官たちは扉を閉め、部屋に残った。彼らは、無言でシャオレイを見張っている。
シャオレイは、自分を呪った。
(……監視。陛下の命《めい》ね。
――馬鹿だわ、私は。
さっき騒がなければ、ここで成し遂げられたのに……)
シャオレイは息をついて、寝台の上で膝を抱えた。毛布をかぶり、わずかな望みにかけた。
(フェイリンのことだから、きっとうまく逃げるはず……。
あのときも、自分の死を偽装したし)
かつてメイレン暗殺を失敗したフェイリンは、ニセの遺体を使って、見事に追手の目をごまかした。
今回もきっとそうだと、シャオレイは信じたかった。
いつの間にか、鳥のさえずりがやんでいたことに、シャオレイは気づいた。
それどころか、風の音すら消えている。
同時に、外からただならぬ気配が迫ってきた。
無数の人間が集まっている気配――その不気味な空気の重さだけが、壁越しにシャオレイへ伝わってきた。
こんな風になるのは、誰かが罰せられるときだけだ。そして今日、それを受ける人間は一人しかいない。
シャオレイの身体がじっとりと冷える。
(フェイリン……逃げなかったの――?)
◆
冷宮は、日当たりの悪い場所にあった。その空気は、湿って重い。
シャオレイが冷宮の門をくぐると、瞬時に刺すような視線を感じた。
ここにいる廃妃たちが、窓や扉の隙間から、新入りのシャオレイをじっと観察しているのだ。
苔むした石畳に、裸足のシャオレイは滑りそうになった。シャオレイには靴も支給されず、囚人同然の扱いだった。
だが、シャオレイの頭の中にあったのは、ひとつの考えだった。
(あとはここで自害するしか、フェイリンを助けられない……)
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シャオレイに用意された部屋は、想像以上に荒れ果てていた。
カビ、湿気、古い血のような、混ざりあったにおいがする。
天井の隅には蜘蛛の巣があり、梁からほこりの塊が垂れていた。
ひび割れた壁は、ところどころに穴が開き、すき間風が流れ込む。
床板は、歩くたびにぎしぎしと音を立てた。
寝台は黒ずんでいて、染みの広がる薄い毛布が掛けられていた。
部屋の隅には、ほこりまみれの卓と椅子が置かれている。
宦官たちは扉を閉め、部屋に残った。彼らは、無言でシャオレイを見張っている。
シャオレイは、自分を呪った。
(……監視。陛下の命《めい》ね。
――馬鹿だわ、私は。
さっき騒がなければ、ここで成し遂げられたのに……)
シャオレイは息をついて、寝台の上で膝を抱えた。毛布をかぶり、わずかな望みにかけた。
(フェイリンのことだから、きっとうまく逃げるはず……。
あのときも、自分の死を偽装したし)
かつてメイレン暗殺を失敗したフェイリンは、ニセの遺体を使って、見事に追手の目をごまかした。
今回もきっとそうだと、シャオレイは信じたかった。
いつの間にか、鳥のさえずりがやんでいたことに、シャオレイは気づいた。
それどころか、風の音すら消えている。
同時に、外からただならぬ気配が迫ってきた。
無数の人間が集まっている気配――その不気味な空気の重さだけが、壁越しにシャオレイへ伝わってきた。
こんな風になるのは、誰かが罰せられるときだけだ。そして今日、それを受ける人間は一人しかいない。
シャオレイの身体がじっとりと冷える。
(フェイリン……逃げなかったの――?)