小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―

第72話 逃げる小鳥

第72話 逃げる小鳥(1/5)




 冷宮を抜けたシャオレイとフェイリンは、それぞれ樽に入れられ、荷車に乗せられた。

 宦官姿の男が、密かに警備兵に賄賂を渡して、門を突破した。

 そのあと、シャオレイたちは馬車に乗せ替えられた。

 その最中も、フェイリンはずっとシャオレイを抱きかかえていた。まるで離したらシャオレイが消えてしまうかのように――しっかりと。

 不意に、フェイリンが何かを思い出して、懐から封筒を取り出した。それから、「ミアルからだ。今見るか?」とシャオレイへ差し出した。
 シャオレイがうなずくと、フェイリンが封筒から取り出す。

 それは、以前ミアル名義で運用されていた、シャオレイの資産の証文だった。これを商会に提出すれば、全額を引き出せる。

 シャオレイは、ミアルの聡明さに改めて感謝した。
(私が稼いだお金……。
一文無しになってしまったと思ってたけど――)

 やがて、馬車の御者――これもラン・ジュンの配下だ――に、フェイリンが声をかける。
「つぎの辻を右に曲がれ。
そこまででいい」

 やがて馬車は、裏路地の小さな茶屋の前で止まった。

 フェイリンが先に降り、続いて降りてきたシャオレイを抱きとめた。

 シャオレイは荒れた声で、御者へ感謝の言葉を述べる。
「ラン殿とミアルへ、お礼を伝えてください……」

「俺からも伝えてくれ。世話になった、と」

 フェイリンも礼を伝えると、御者は一礼し、馬車は夜の闇に紛れるように走り去っていった。

< 359 / 492 >

この作品をシェア

pagetop