小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第74話 いちばん大事な人(5/7)


 シャオレイが沈黙を破った。
「――私、皇后を殺せなかったわ」
 眉を寄せるフェイリンへ、シャオレイは続けた。
「あなたのくれたかんざしを、皇后へ突き出したの。
途中でミンシーに止められたから、刺してやったけど。
――でも……本命には届かなかった。
こんなことならかんざしを2本もらって、致死毒にしてもらえばよかったわ」
 シャオレイは皮肉気に笑った。

 フェイリンは複雑な表情をして、言った。
「そなたは危ない橋を渡る……」

「フェイリンの代わりに、仇討ちしようと思ったの。
もう死んでも構わなかったから」

 フェイリンは、包帯姿の手をシャオレイの手に重ねた。それから、ぽつりと言った。
「俺の仇討ちで、そなたを失うのはごめんだ……」

 その言葉に、シャオレイの目が揺れた。
 自分の命が、フェイリンの願いの中にある――その喜びが、シャオレイの胸を満たしていた。
 シャオレイは、傷だらけの彼の手を見ながら、うなずいた。

「――それで、どういう状況で実行したんだ?」

 突拍子もないフェイリンの言葉に、シャオレイは眉を上げた。奇妙に思いつつも、説明した。

 やがて、フェイリンが話し始めた。
「メイレンは、背を向けていても殺気に気づく。
狙うなら、あの女が獲物に集中している瞬間だ。
そうすれば、殺意を紛れ込ませられる」

 シャオレイが目を丸くしてるのをよそに、フェイリンの言葉は続く。

「そのときはへそから下を狙え。
心臓や首が確実だが――そなたでは力負けして、返り討ちにあう」

 シャオレイは、フェイリンの助言をぼんやりと聞きながら思った。
(そういえば、以前にもこんなことがあったわね……)

「一番重要なことだが……条件がそろっていないときは、断念しろ。
強行しても無駄死にするだけだ。
――どうした?」

 シャオレイは、いつものフェイリンに笑ってしまった。そして、フェイリンの両手を包んで軽くたたいた。
「そうだった……あなたはフェイリンだったわ。
助言は次に生かす。
でも、こういうときは、私を止めるもんなんじゃないの……?
”危ないからやめろ”って」

「次があるとは思いたくない。
だが……そなたを止めたところで済まんと知ってる」
 それは、またしてもフェイリンの不器用な優しさだった。

 シャオレイはうなずきながら、ほほ笑んだ。

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