小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―

第75話 発火しかける衝動

第75話 発火しかける衝動(1/6)


 寝台でうつぶせになるフェイリンのすぐ横に、シャオレイは腰かけていた。
 組紐を編んで首飾りを作りながら、小さく鼻歌を歌っている。

 シャオレイからゆるやかに流れる旋律に、フェイリンの耳はずっとくすぐられていた。
(なぜ、そんなにも無防備でいられる……)
 手を伸ばせば触れられる距離が、フェイリンにはイラ立たしかった。

「あっ……」
 シャオレイが小さく声をあげると同時に、彼女の指からこぼれたガラス玉が、床を跳ねる音がした。
 シャオレイは寝台から立ち上がり、しゃがんでガラス玉を拾い上げた。その仕草に合わせて、ゆるく結われた髪が肩から滑り落ちる。

 フェイリンの視線が、シャオレイをとらえた。
 顔を伏せたシャオレイの横顔とうなじ――視界に映り込んだそれを、フェイリンはすぐさま意識の奥に押し込める。

 シャオレイは何も気づかないまま、再び寝台へ戻った。
 そのとき、シャオレイの腰と布団が触れて、衣擦れの音を立てた。そして、わずかな振動がフェイリンに伝わった。
 その瞬間、フェイリンの肌の奥がぞわぞわと熱を帯びた。呼吸が、気づかぬうちに浅くなっていた。
 フェイリンは、唇を噛んで耐えた。
(――以前シャオレイに想いを告げたら、"体だけなら、今すぐ差し出す"と言われた。
だから……俺が求めればシャオレイはそうする。
だが――俺に心を預けた確信が欲しいから、シャオレイに応じてほしくない)
 自分に言い聞かせるように、フェイリンは枕を強く握りしめた。
 フェイリンの情欲が、理性の隙間を狙っていた。

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