小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第76話 真昼の微熱(3/5)


 フェイリンは目を丸くしていた。
 まばたきもせず、シャオレイをじっと見つめたまま――今の言葉の意味を、頭の中で繰り返し考えていた。

 シャオレイは、フェイリンの頬へ触れようとして、ためらった。それから目を伏せて、ぽつりと語り出す。
「――でも私、あなたを利用してたわ……」

「俺もそなたを利用していた」

「あなたの恋心につけこんで、優しさに甘えてたのよ」

「知っていた」

「あなたが義兄妹とか言い出したときは意味不明だったけど、ほっとしてたわ。
これで協力関係を切られないって」

「それは良かった」

「良かったって……」
 シャオレイは、思わずフェイリンを見た。

 フェイリンは、告白したときと同じ、まっすぐな瞳でシャオレイをつかんでいた。

 またもやシャオレイは、フェイリンに追い詰められていた。
「わ……私……夫を裏切る女なのよ。
皇帝の妃でありながら、あなたの腕の中にいたわ」

「だがあのとき、そなたの心は、俺の元には無かった」

「また……冷めちゃうかも。
だって、あんなに命をかけた陛下との愛ですら、あっけなく終わっちゃったんだもの。
自分でもびっくりだわ」
 茶化すような物言いだったが、シャオレイの目には涙がにじんでいた。

「シャオレイ」
 フェイリンは寝台から身を乗り出して、シャオレイを壁際に追い詰める。
「あまり俺を見くびるなよ……?」
 その目は熱く――優しかった。

 シャオレイは、目を丸くしていた。
(また、物騒なこと言ってる……)

 シャオレイの脳裏に浮かんだのは、かつてシュエン妃に毒を盛られたあの日。
 軽い毒だったものの、沈んでいたシャオレイにフェイリンが言ったのだ。――”いずれ俺が消してやるから、安心しろ”と。
(――でもこれが、この人の精いっぱいの愛の言葉なんだわ……)
 シャオレイは、笑いをこらえたような、困ったような顔をしながら、フェイリンの頬へ手を伸ばした。
 それから、フェイリンへそっと口づけをした。

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