小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第76話 真昼の微熱(4/5)


 シャオレイと吐息を混ぜながら、フェイリンは「なぜ、あのとき口づけをした?」と訊いた。
 あのときとは――ふたりが冷宮で再会したとき。

 シャオレイは、目を潤ませながら言った。
「感じたかったの……あなたを。
あなたが生きているってことを」

 その言葉が、フェイリンの心を強くとらえた。
 フェイリンはシャオレイを抱きしめながら、彼女の帯紐に指をかける。

 口づけの隙間から、シャオレイが言った。
「あの……!お医者様が1ヶ月は動くなって――」

 フェイリンは動きを止めた。
 フェイリンの瞳に宿るものは、欲ではなく、渇きだった。――言葉だけでは埋まらない、この現実が本当にあるという証しへの。
 フェイリンは知っていた。
 今この瞬間手の中にあるものが、この先ずっとあるとは限らない。
 そして、これからも生き延びられる保証など、どこにもないことも。
 一夜にして奪われたあの幸せな日々が、フェイリンにそれを教えてくれていた。
 だからこそ、今しかない。
 フェイリンは、シャオレイが”一緒にいたい”と言ってくれたこの一瞬だけは、体の奥に刻んで、消えないようにしておきたかった。

 そしてフェイリンは、燃えるような切実さで言った。
「そなたのすべてを、俺にくれ……今」

 フェイリンのにじむ想いを、シャオレイも感じ取っていた。
「あのときの私と同じね……。
確かめたいのね、私がここにいるって。
また失う前に、刻みたいのね――私を……」

 フェイリンの紫水晶の瞳が、うなずいていた。

 シャオレイは観念するように、静かにほほ笑んだ。それは、フェイリンの孤独を受け入れるものだった。
 そして、同じ熱に身をゆだねるためのひとことが、シャオレイの唇から滑り落ちる。
「抱いて」

< 386 / 492 >

この作品をシェア

pagetop