小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―

第77話 溺れるふたり

第77話 溺れるふたり(1/4)




 ふたりは、恋に溺れていた。――いや、フェイリンがシャオレイを離してくれなかったのだ。

 3日目の朝になっても、フェイリンの熱は冷めなかった。

「朝食をお持ちしました……」
 女将の声と盆を置く音が、扉越しにした。

 シャオレイは「ありがとう」と返事をし、そろりと寝台を抜け出した。それから掻い巻き《かいまき※》を羽織り、そっと扉を開ける。[※薄く綿を入れた着物状の寝具]

 廊下の台の上には、粥とお茶が載った盆が置かれていた。

 シャオレイがそれを取り、部屋の小机の上に乗せる。
 そのとき、シャオレイの背後からフェイリンの手が伸びてきて、彼女の体に巻きついた。
「勝手に動くな」

 低くささやくフェイリンの声に、シャオレイは苦笑する。
「食べましょうよ……冷めちゃう」

 だが、フェイリンは巻きつけた腕をほどこうとしなかった。

 仕方なく、シャオレイは立ったまま粥を食べ始めた。

「俺にも食わせろ」
 後ろのフェイリンが、当然のように言った。
 シャオレイはレンゲ匙に粥をすくい、フェイリンの口元に差し出した。

 素直に食べるフェイリンに、シャオレイがあきれた視線を投げた。
(この前は“俺は雛じゃない”って、言ってたくせに……)

 ふたりで粥を分け終えた直後、フェイリンが再びシャオレイの口をふさいだ。

 シャオレイは、溺れそうになる甘さを振り切って言った。
「ねえ、いい加減薬を塗り直さないと……!」

 フェイリンはそれを無視して、シャオレイにべったりと貼りついていた。

 この3日間、フェイリンはずっとそんな調子だった。
 シャオレイが衣を整えようとしても、寝台から下りようとしても、顔を洗おうとしても――フェイリンはすぐにシャオレイを引き寄せ、肌のぬくもりを求めた。

 シャオレイもまた、フェイリンの肌の心地よさを味わってしまっていた。

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