小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第77話 溺れるふたり(2/4)


 シャオレイは、心配していた。
(フェイリンがこんなに溺れるとは、思わなかった……。
夜もロクに寝ないし、このままじゃまずいわ。
私の責任ね……)

 フェイリンの包帯には薄く血がにじみ、敷布団には点々と血の跡があった。彼の傷が裂けているのは明らかだ。

 シャオレイは覚悟を決めた。
(こうなったら……あれをやるしかないわ)

 シャオレイは、いつも通りフェイリンの求めを受け入れるふりをした。
 フェイリンが浅い眠りに落ちたのを見計らい、シャオレイは彼の手首にゆるく紐を巻いた。
 それから、動きを制限しすぎないほどの長さで、寝台の脚へと結んだ。

 シャオレイは、うつ伏せで寝るフェイリンの横に腰かける。
(起きたら、怒るかも……。
でも、これ以上続けたら治りが遅くなるわ。
フェイリンがあんなに私を求めるなんてね……)

 薄く笑いながら、フェイリンの額の汗を手巾で優しく拭った。
(でも――)
 シャオレイのほほ笑みはゆっくりと消え、真顔に戻る。
(この愛もまた、いつか終わるかもしれない)
 シャオレイの胸に、冷たい現実が広がっていた。

 皇帝に追われる身。
 額に刻まれた小鳥の――呪い。
 ふたりに逃げ道などなかった。

 シャオレイは、フェイリンに巻かれた包帯を解いていった。すると、フェイリンの裂けた傷が、シャオレイの瞳に映る。
(あなたは優しい……。
私のせいで拷問と杖刑を受けても、私を責めない。
それどころか気遣い、かばって、助けに来てくれた)

 シャオレイは指先で、フェイリンの傷へそっと軟膏を塗っていった。
(だから、怖い。
こんなに深い愛が、また壊れるんじゃないかって……。
陛下とのときも、信じてたわ。
困難を乗り越えた先に、永遠の幸せがあると……)

 それからシャオレイは、清潔な包帯で巻き直し、布団をそっとフェイリンへかけた。
 シャオレイの瞳へ、穏やかに眠るフェイリンが映る。やがてシャオレイは身をかがめて、フェイリンの首に顔をうずめた。
(フェイリンを疑ってるわけじゃない。
ただ……幸せになるのが怖いだけ)

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