小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第77話 溺れるふたり(3/4)


 やがて、フェイリンが目を覚ました。
 手首に巻かれた紐と、動かない腕に気づき、うつ伏せのままシャオレイを見やる。
「何の真似だ……?」
 フェイリンの声には、戸惑いとわずかな不満がにじんでいた。

「こうでもしないと止まらないでしょ?」

「……否定はしない」

 フェイリンなりに、自覚があった。
 たしかに、昨夜もその前の晩も、フェイリンはシャオレイを何度も求めた。――求めすぎた。
 フェイリンの理性は、シャオレイの虜になっている自分を冷ややかに見ていた。
 それでもフェイリンは、愛した女で12年分の孤独を満たしたかったのだ。

「背中の傷、裂けてたわ。――薬は塗ったから」
 シャオレイの言葉に、フェイリンは顔をそむけたまま答えない。

 シャオレイは視線を自分の膝に落としたまま、ぽつりと言った。
「私も悪いのよ……。
あなたに抱かれているときだけは、ただの恋する女でいられたから。
つい――」

「……それが本音か?」
 フェイリンの声が低く響いた。

 シャオレイは膝に視線を落としたまま、「そうよ」と、うなずいた。

 それを聞いたフェイリンの瞳が、一瞬揺れた。それから、息をついて言った。
「そなたは、俺を煽っているのか?」

 突拍子もない言葉に、シャオレイは振り向いた。
「なんで、そうなるの!?」

「……そうとしか思えない」

「何それ……」
 シャオレイには、わけが分からなかった。

 青楼で学んだものは、すべてフェイリンに通じない。媚びることも、甘えることも、挑発も――。
 フェイリンを欲情させる言葉は、シャオレイの“本音”なのだ。

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