小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第77話 溺れるふたり(4/4)


 そのとき、茶屋の主の「医者が参りましたので……」という声が、扉の向こうからした。

 とたんに、シャオレイの体がビクッと跳ねる。

 おそるおそるシャオレイが扉を開けると、先日と同じ無精ひげの医者がズカズカと入ってくる。
 医者はフェイリンの布団を剥ぎ、包帯を手早く解いていった。だが、次の瞬間、医者の目が怒りで見開かれる。

 フェイリンの傷が、いくつか開いていたからだ。――特に腰回りが。

 医者は突然、フェイリンの頭をはたいた。

 シャオレイが目を丸くする。

「1ヶ月は動かすな!と言っただろう、馬鹿者!」
 医者の怒声に、フェイリンは目をそらして黙っていた。

 医者は、フェイリンの手首の紐とシャオレイの相関に気づき、彼女をじろりとにらんだ。

 肩を縮めて何かを言いかけたシャオレイに、フェイリンが割って入った。
「彼女は関係ない。俺が悪い」

 その言葉に、医者はもう一度、フェイリンの頭をはたいた。
「縫い直しだ!
報酬は2倍貰うからな!
――強い酒を持ってこい!」

 シャオレイは慌てて部屋を飛び出し、酒を持って戻ってきた。

 医者はフェイリンに酒を渡して「飲め」と言い、グイグイと飲ませた。縫合の痛みを鈍らせるためだ。
 それから、怒りの形相で、フェイリンの傷を縫っていく。

 フェイリンは、目を閉じて痛みに耐えていた。

 やがて、縫合を終えた医者が、フェイリンとシャオレイへ念押しをした。
「絶っ対に、動かすなよ……?
お嬢さんは、このケダモノに近寄っちゃいかん!」
 医者は足音も荒く、部屋を後にした。

 シャオレイは医者の言葉を思い出し、つい吹き出してしまう。
(ケダモノ……)

 フェイリンは布団をかぶって、ふて寝していた。

 それを見て、シャオレイは真顔になった。
(……笑ってる場合じゃないわ。なんとかしないと)

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