小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第79話 恋の歌にすがる皇帝
第79話 恋の歌にすがる皇帝(1/4)
◆
宮中は、沈みゆく夕陽に染められていた。
紫微殿《しびでん》の執務室で、ゼフォンは机上に積まれた報告書の山に目を通していた。
それは、謀反を起こしたジュンと、彼に拉致されたミアルの足取りを追う調査報告だった。
ゼフォンは、目を通した報告書へ印を押し、脇に寄せていく。
その間にも、新たな報告書を持った内侍が、ゼフォンの元へ途切れることなくやってきた。
ゼフォンは、行方不明のままのミアルを思って、大きく息をついた。
(ラン・ジュンとミアルの足取りは、国境付近で途絶えた。
となると、国外に出たか……。――もう、捕らえられぬやも。
ミアルの亡きご両親に、申し訳がたたぬな……)
だが、ゼフォンの意識の半分は、別のことに支配されていた。それは――シャオレイたちのことだった。
やがて、ゼフォンの密偵たちが、静かに入室してきた。
ラン・ジュンが戦闘指揮をした記録を、密偵たちはすべて洗い直し、”ビン・ユエン”なる人物が存在しないことを突き止めていた。
そこでゼフォンは、ラン・ジュン個人ではなく、ラン家そのものに恨みを持つ者だと考え直し、追加調査を命じていた。
ゼフォンは密偵から受け取った、新たな報告書に目を走らせた。やがて、声を押し殺すようにつぶやく。
「ユン・フェイリン――それが、あやつの名か」
皇太子時代の側室だったユン夫人が、ゼフォンの頭によぎった。
(あやつはユン夫人――いや、ユン家が滅ぼされた件で、予を憎んでいるのかもしれないな。
だから、カナリアを奪ったのか……?)
別の報告書にも目を通しながら、ゼフォンは小さく息をついた。
「ユン・フェイリンたちの脱走を手助けした者の正体は、分からずじまいか……。
――まあよい」
ゼフォンは静かに命じた。
「ユン・フェイリンがラン家に恨みを持つなら、巡幸で皇后を狙うはず。
だとすると、あやつは北方に潜んでいるだろう。
そこを重点的に探れ。
――おそらくヤン妃も一緒にいる」
「御意」
密偵たちは、すぐに部屋をあとにした。
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宮中は、沈みゆく夕陽に染められていた。
紫微殿《しびでん》の執務室で、ゼフォンは机上に積まれた報告書の山に目を通していた。
それは、謀反を起こしたジュンと、彼に拉致されたミアルの足取りを追う調査報告だった。
ゼフォンは、目を通した報告書へ印を押し、脇に寄せていく。
その間にも、新たな報告書を持った内侍が、ゼフォンの元へ途切れることなくやってきた。
ゼフォンは、行方不明のままのミアルを思って、大きく息をついた。
(ラン・ジュンとミアルの足取りは、国境付近で途絶えた。
となると、国外に出たか……。――もう、捕らえられぬやも。
ミアルの亡きご両親に、申し訳がたたぬな……)
だが、ゼフォンの意識の半分は、別のことに支配されていた。それは――シャオレイたちのことだった。
やがて、ゼフォンの密偵たちが、静かに入室してきた。
ラン・ジュンが戦闘指揮をした記録を、密偵たちはすべて洗い直し、”ビン・ユエン”なる人物が存在しないことを突き止めていた。
そこでゼフォンは、ラン・ジュン個人ではなく、ラン家そのものに恨みを持つ者だと考え直し、追加調査を命じていた。
ゼフォンは密偵から受け取った、新たな報告書に目を走らせた。やがて、声を押し殺すようにつぶやく。
「ユン・フェイリン――それが、あやつの名か」
皇太子時代の側室だったユン夫人が、ゼフォンの頭によぎった。
(あやつはユン夫人――いや、ユン家が滅ぼされた件で、予を憎んでいるのかもしれないな。
だから、カナリアを奪ったのか……?)
別の報告書にも目を通しながら、ゼフォンは小さく息をついた。
「ユン・フェイリンたちの脱走を手助けした者の正体は、分からずじまいか……。
――まあよい」
ゼフォンは静かに命じた。
「ユン・フェイリンがラン家に恨みを持つなら、巡幸で皇后を狙うはず。
だとすると、あやつは北方に潜んでいるだろう。
そこを重点的に探れ。
――おそらくヤン妃も一緒にいる」
「御意」
密偵たちは、すぐに部屋をあとにした。