小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―

第80話 特別な贈り物

第80話 特別な贈り物(1/3)




 禁軍統領の私邸の書斎へ、夕食を終えたシン統領がやってきた。
 不意に、暗がりから「シン統領」と声が響く。

 名を呼ばれたシン統領が驚いて振り向くと、そこには黒ずくめの男――フェイリンが立っていた。
 フェイリンの傷は、治りを早める薬湯の服用で癒えた。今では、こうして忍び込めるほどになっている。
 フェイリンは、すぐに自らの佩玉《はいぎょく》を差し出した。

 シン統領はそれを手に取り、顔色を変えた。
「これは確か……ユン家の――」

「ユン・フェイリンです。
ご無沙汰しております」
 フェイリンは幼い頃、実家で何度かシン統領と会っていたのだ。

 シン統領は、佩玉をフェイリンに返して言った。
「生き残りがいたとは聞いていたが……。
それで、何用だ?」

「シン統領と手を組みたいと思いまして。
去年のラン・ジュンが起こした謀反――ここも襲撃されましたね?
ラン・ジュンの配下に」

「――何の話だか分からんな」

 警戒心をあらわにするシン統領へ、フェイリンは続けた。
「ラン・ジュンの謀反の兆候を、ラン・リーハイに知らせたのは私です。
一時期、ラン家の私兵団に潜入していましたので」

 その一言に、シン統領の顔が険しくなった。

 フェイリンが続ける。
「ラン・リーハイと取引をされたでしょう?
シン統領の私邸襲撃を、お互いに口外しないと」

「手を組むといったな……?
目的は、ラン・リーハイの排除か」

「――シン統領もそうでしょう?
火種は消しておきたいはず。
ラン・リーハイが左遷され、廃后と立太子の噂が広まっている。
となると……ラン家は帝位を奪うはず。
もし彼らが実権を持ったら、真っ先に排除されるのは――」

 シン統領がぴたりと制した。
「ラン殿が左遷されたのは、ユン殿の仕業だな?」

「ご想像にお任せします」

「……それで?俺は何をすればいい?」

 フェイリンは声を潜め、ささやいた。
「3月の巡幸で――……」

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