小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―

第81話 未来への約束

第81話 未来への約束(1/5)




 2月も半ばを過ぎた。

 シャオレイとフェイリンは、ニンチュアンの街道から外れた裏通りの貸し家で、ひっそりと暮らしていた。

 フェイリンはメイレン暗殺をなすべく、3月の巡幸に紛れ込む算段を立てていた。それから配下と共に、刀の腕を鍛え直していた。



 この日もシャオレイとフェイリンは、連れ立って市場を歩いていた。

 シャオレイは布小物の屋台に寄り、先日注文していた香り袋を2つ受け取った。その出来栄えに目を輝かせ、嬉しそうに手持ちの巾着袋にしまった。

 フェイリンはさりげなく周りを見回して、尾行が付いていないかを警戒していた。

 シャオレイは楽しそうに「もう1軒寄りたいの」と言い、香屋《こうや》へ向かった。
 道すがら、シャオレイがフェイリンに尋ねた。
「ねえ、フェイリンはどんな香りが好き?」

 フェイリンは少し考えて答えた。
「――マンダラゲだな」

「そんな香りあったかしら……?」

「毒草だ」

「……毒以外でないの?」

「考えたこともないな」
 シャオレイは一瞬白けた顔をしたあと、フェイリンを放っておくことにした。

 香屋《こうや》に着いたシャオレイは、女性の店主と一緒に香を選び始めた。

 フェイリンは店の入口の近くで、外を警戒していた。

 売り台には小瓶がずらりと並び、シャオレイはひとつずつ熱心に香りを確かめる。
 それから、フェイリンへ近寄り、伽羅《きゃら》と梅を合わせた香を彼の鼻先に近づけた。
「ねえ、これはどう?」

 シャオレイの浮かれた様子に、フェイリンは違和感を覚えつつも、香を嗅いでから言った。
「悪くない」

「じゃあ、これをいただくわ」
 シャオレイは店主に嬉しそうに言った。それから、巾着袋から2つの香り袋を取り出し、店主に香を詰めてもらった。

 フェイリンはその様子を横目で見ていた。
(誰かへの贈り物か……?)

 フェイリンの視線に気付いたシャオレイが、「見ちゃダメ」と楽しげに言いながら、彼の体をくるりと後ろ向きに回した。

 その瞬間、フェイリンは香り袋の贈り先を察した。

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