小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第82話 引き裂かれた夫婦
第82話 引き裂かれた夫婦(1/6)
◆
3月も、だいぶ過ぎた。雪も降らなくなり、水の冷たさもゆるんでいた。
小さな貸し家の中庭では、フェイリンが自らの配下たちと刀を交わらせ、鍛錬をしている。
部屋の中では、シャオレイがひとり、舞いながら考え込んでいた。
(巡幸が始まっている。
船がニンチュアンに来るまであと半月。
陛下は私たちを諦めてくれたかしら……。
――いえ、それはないわね)
シャオレイに薄暗い気持ちが広がったそのとき、鍛錬を終えたフェイリンがやってきた。
フェイリンの顔を見た瞬間、シャオレイの胸がぱっと晴れた。まるで、東風が暗雲を吹き飛ばし、春のやわらかな陽ざしが差し込んだようだった。
◆
配下が買ってきた昼食を終えると、シャオレイが中庭に出た。フェイリンもその後に続く。
その陽光の差し込む中庭を、ふたりは並んでゆっくりと歩いた。
フェイリンの左手はいつも、腰に下げた刀の柄を握っている。その手は、今は革手袋で保護されていた。
宮中で受けた拷問で剥がされたフェイリンの爪は、ようやく薄く生えはじめたところだった。まだ彼の指先にはしっかり力が入らず、細かい動作には時間がかかる。
そんなフェイリンの右腕に、シャオレイは遠慮がちに自分の腕を絡ませた。――フェイリンが刀を抜くときに、邪魔にならないように。
(すべてが終わったら、フェイリンは刀を下げることもなくなるわ。
そのときは、遠慮なく腕も組める)
シャオレイが、ちらりとフェイリンの顔を見上げる。そこには、相変わらず無愛想で、そっけない表情が浮かんでいた。
(不思議……。
こんなに無愛想なのに、どうして私の心は落ち着くのかしら?)
シャオレイは、フェイリンの頬を指でつんと突いた。
フェイリンがちらりとシャオレイを見た。そのまなざしには、あたたかさが宿っている。
「なんだ?」
「なんにも」
シャオレイは、いたずらっぽくほほ笑んだ。
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3月も、だいぶ過ぎた。雪も降らなくなり、水の冷たさもゆるんでいた。
小さな貸し家の中庭では、フェイリンが自らの配下たちと刀を交わらせ、鍛錬をしている。
部屋の中では、シャオレイがひとり、舞いながら考え込んでいた。
(巡幸が始まっている。
船がニンチュアンに来るまであと半月。
陛下は私たちを諦めてくれたかしら……。
――いえ、それはないわね)
シャオレイに薄暗い気持ちが広がったそのとき、鍛錬を終えたフェイリンがやってきた。
フェイリンの顔を見た瞬間、シャオレイの胸がぱっと晴れた。まるで、東風が暗雲を吹き飛ばし、春のやわらかな陽ざしが差し込んだようだった。
◆
配下が買ってきた昼食を終えると、シャオレイが中庭に出た。フェイリンもその後に続く。
その陽光の差し込む中庭を、ふたりは並んでゆっくりと歩いた。
フェイリンの左手はいつも、腰に下げた刀の柄を握っている。その手は、今は革手袋で保護されていた。
宮中で受けた拷問で剥がされたフェイリンの爪は、ようやく薄く生えはじめたところだった。まだ彼の指先にはしっかり力が入らず、細かい動作には時間がかかる。
そんなフェイリンの右腕に、シャオレイは遠慮がちに自分の腕を絡ませた。――フェイリンが刀を抜くときに、邪魔にならないように。
(すべてが終わったら、フェイリンは刀を下げることもなくなるわ。
そのときは、遠慮なく腕も組める)
シャオレイが、ちらりとフェイリンの顔を見上げる。そこには、相変わらず無愛想で、そっけない表情が浮かんでいた。
(不思議……。
こんなに無愛想なのに、どうして私の心は落ち着くのかしら?)
シャオレイは、フェイリンの頬を指でつんと突いた。
フェイリンがちらりとシャオレイを見た。そのまなざしには、あたたかさが宿っている。
「なんだ?」
「なんにも」
シャオレイは、いたずらっぽくほほ笑んだ。