小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第82話 引き裂かれた夫婦(2/6)


 中庭の隅に一本、海棠《かいどう》が植えられていた。咲きほこる淡い紅の花が、風が吹くたびにはらはらと散る。

 その甘い香りが、シャオレイへと降ってくる。それから、ほのかな伽羅と梅の香りがシャオレイの鼻をくすぐった。ふたりのおそろいの香り袋の匂いだった。
 上から海棠、下から香り袋の梅。ふたつの香りに包まれて、シャオレイはふっと目を細めた。

 ふと、フェイリンの視線がシャオレイの衣へと流れた。フェイリンは、昨日贈った佩玉が気になったのだ。

 それに気づいたシャオレイが、胸の下を押さえて言った。
「佩玉はここにあるわ。
無くしたら大変だもの」
 シャオレイは、訶子《かし》の紐に佩玉を大事に吊るしていた。

「そうか……」

「――ねえ、ビーシェンに行ったら婚礼をあげましょう」

 一拍置いて、フェイリンが答える。
「……そうだな」

「婚礼衣装は、華やかなのがいいわね」

「俺はなんでも――」

「ダメよ。
一生に一度なんだから、あなたもうんときらびやかにしないと。
金銀の刺繍をいっぱい使うの」

「そなたに任せる」
 フェイリンは前を向いたまま、淡々と返す。

 だが、シャオレイにはお見通しだった。
「興味無さそうにしてるけど、分かるわ。
あなたは嬉しいとき、口数が減って体が固くなるのよ」

 フェイリンの視線が一瞬揺れ、横目でシャオレイを見た。

 シャオレイはそっと、革手袋をしているフェイリンの手を握った。それから、ぎゅっと握られたフェイリンの指をほぐすように、自分の指を絡めた。
「ほら、ね?指先までガチガチ……」

「――嬉しくないとは、言ってない」

 目をそらして答えたフェイリンに、シャオレイはふっと笑った。

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