小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第82話 引き裂かれた夫婦(3/6)


 そのときだった。
 塀の上に、黒ずくめの影が一斉に現れた。ゼフォンの密偵たちだ。
 10ほどの男が、フェイリンたちをめがけて、音もなく飛び降りてくる。

 シャオレイが小さく悲鳴をあげると同時に、別の黒ずくめの集団――メイレンの刺客が、塀の外から踏み込んできた。密偵たちの不意を突き、斬りかかる。

 突然の乱入者に、密偵たちの動きは乱れていた。

 フェイリンは即座に刀を抜き、応戦していた。フェイリンの配下も駆けつけ、混戦になった。

 フェイリンが気づいたときには、シャオレイがメイレンの刺客に捕らえられていた。シャオレイの喉元には、鈍く光る刀が突きつけられている。

 フェイリンが動きを止めた瞬間、刺客は素早くシャオレイを連れて門から逃げていった。それを、ゼフォンの密偵が数人、追いかけていった。

 フェイリンは「シャオレイ!」と叫びながら、門を飛び出す。だが、路地にはすでに誰の姿もなかった。

 次の瞬間、残っていたゼフォンの密偵がフェイリンの背後から襲いかかる。

 フェイリンは、振り返りざまに刀で受け止めた。鋭い金属音が響く。

 密偵たちは確かに手練れだった。連携が取れており、フェイリンの動きを読んでいる。ひとりがフェイリンの正面から斬り込む間に、別のひとりが死角へ回り込む。

 フェイリンは舌打ちした。指先にうまく力が入らない。革手袋越しでも、刀の重さが今日はいつもより響いた。
 だが――フェイリンは応戦しながら、じりじりと路地の奥へ誘い込んだ。狭い路地では、密偵たちの連携が崩れる。ひとりずつしか前に出られない。
 フェイリンは先頭の密偵の刀をいなし、その体を思いきり蹴った。密偵たちが一瞬、動きを止める。

 その隙に、フェイリンは路地の塀を蹴って屋根へ飛び上がった。
 密偵たちが追ってくるが、フェイリンには地の利があった。この界隈の屋根の並びは、すでに彼の頭に叩き込んである。
 屋根から屋根へフェイリンが跳ぶと、密偵たちとの距離が開いていく。
 フェイリンは民家の陰に飛び込み、息を殺して気配を消す。

 しばらくして、密偵たちの足音が遠ざかった。

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