小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第82話 引き裂かれた夫婦(6/6)




 公務を終え、後宮船へ戻ったメイレンのもとへ、内侍がやって来た。

「――“手土産”を手配いたしました。尚、ユン・フェイリンは、仰せの通り泳がせております」

「ご苦労」
 それだけ言って、メイレンはほほ笑んでいた。
(”手土産”には、役目を果たしてもらうぞ。
ダン・ゼフォンを葬るためにな……)

 メイレンは、別室に連れてこさせたシャオレイを見下ろした。

 シャオレイは囚人のように座らされていたが、その瞳には怯えよりも静かな怒りが宿っていた。

「久方ぶりだな、ヤン妃。……いや、今は“何者”だったか?」

 メイレンの皮肉混じりの問いに、シャオレイは答えなかった。だが、相手の狙いには気づいていた。
(この人は、陛下を“女に溺れた暗君”として処刑するための、名分が欲しいのね。
その材料に私を使う気だわ。
――“陛下の心を惑わした傾国”とね。
でも傾国の価値なんて、私には無いわ。
陛下は、私に激怒しているもの。
――今さら私に溺れるなんて、あり得ない)

 メイレンは優雅に袖で口元を隠して、笑った。
「陛下は“最愛の妃”を亡くしてから、ずっと憔悴しておられる……。
だから、そなたが慰めてやってくれ。
――来い」

 シャオレイは立ち上がり、メイレンに従った。だが、この運命に負けたわけではない。
 ただ――受けて立つ覚悟を決めていた。

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