小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第84話 思い出に抱かれて
第84話 思い出に抱かれて(1/6)
◆
巡幸船団は、次の目的地――ティンピンへ向かって、大河を進んでいた。
夕陽が、御座所《ござしょ》内に薄く差し込んでいる。
だが、そこに漂うのは張りつめた気配だった。
ゼフォンに抱きかかえられたシャオレイは、寝台にそっと座らされた。
ゼフォンはチャオ内侍に衣《ころも》を脱がされたあと、中衣《ちゅうい》姿でシャオレイの横に腰を下ろした。
それからシャオレイのあごをそっとつかみ、口づけをした。
「そういえば……ルリに尋ねたいことがあったのだ」
その瞬間、シャオレイの心臓が跳ねる。
ゼフォンは、湯室《とうしつ》で没収した佩玉を、シャオレイに示した。
「誰から、預かった……?」
ゼフォンの声は柔らかかったが、シャオレイを追い詰めていた
シャオレイは、何も言えなかった。
佩玉を贈られる意味を、ゼフォンも知っている。シャオレイがどう答えても、ゼフォンの怒りを避けられない。
シャオレイは黙ったまま、膝に目を落とした。
しばらくの沈黙のあと、ゼフォンは息をついた。それから、シャオレイの手のひらに佩玉を乗せてたったひとこと――
「壊すのだ」
佩玉を壊す意味も、ゼフォンは知っている。
シャオレイは、小さく首を振った。
(何をしてるの私。
演技で壊せばいいじゃない。
それが最善なのよ)
シャオレイの理性は叱咤したが、彼女の体は動かない。大切な夫から託された愛の証しを、この手で壊せなかった。
「なぜ出来ぬ……?」
ゼフォンの声には、かすかなイラ立ちと哀しみがにじんでいた。
シャオレイは、ただ、手のひらの佩玉を見つめていた。
その様子に、ゼフォンの顔色が変わった。ゼフォンは無言でシャオレイから佩玉をむしり取り、床へと叩きつけた。
粉々に砕けた佩玉の音が、シャオレイの心臓を握りつぶした。
「そなたの夫は、予なのだぞ」
ゼフォンの目には、怒りのほかに悲痛な色も宿っていた。
シャオレイはその言葉を受け止めることしかできず、うなずいた。
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巡幸船団は、次の目的地――ティンピンへ向かって、大河を進んでいた。
夕陽が、御座所《ござしょ》内に薄く差し込んでいる。
だが、そこに漂うのは張りつめた気配だった。
ゼフォンに抱きかかえられたシャオレイは、寝台にそっと座らされた。
ゼフォンはチャオ内侍に衣《ころも》を脱がされたあと、中衣《ちゅうい》姿でシャオレイの横に腰を下ろした。
それからシャオレイのあごをそっとつかみ、口づけをした。
「そういえば……ルリに尋ねたいことがあったのだ」
その瞬間、シャオレイの心臓が跳ねる。
ゼフォンは、湯室《とうしつ》で没収した佩玉を、シャオレイに示した。
「誰から、預かった……?」
ゼフォンの声は柔らかかったが、シャオレイを追い詰めていた
シャオレイは、何も言えなかった。
佩玉を贈られる意味を、ゼフォンも知っている。シャオレイがどう答えても、ゼフォンの怒りを避けられない。
シャオレイは黙ったまま、膝に目を落とした。
しばらくの沈黙のあと、ゼフォンは息をついた。それから、シャオレイの手のひらに佩玉を乗せてたったひとこと――
「壊すのだ」
佩玉を壊す意味も、ゼフォンは知っている。
シャオレイは、小さく首を振った。
(何をしてるの私。
演技で壊せばいいじゃない。
それが最善なのよ)
シャオレイの理性は叱咤したが、彼女の体は動かない。大切な夫から託された愛の証しを、この手で壊せなかった。
「なぜ出来ぬ……?」
ゼフォンの声には、かすかなイラ立ちと哀しみがにじんでいた。
シャオレイは、ただ、手のひらの佩玉を見つめていた。
その様子に、ゼフォンの顔色が変わった。ゼフォンは無言でシャオレイから佩玉をむしり取り、床へと叩きつけた。
粉々に砕けた佩玉の音が、シャオレイの心臓を握りつぶした。
「そなたの夫は、予なのだぞ」
ゼフォンの目には、怒りのほかに悲痛な色も宿っていた。
シャオレイはその言葉を受け止めることしかできず、うなずいた。