小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第84話 思い出に抱かれて(2/6)


 寝台の帳《とばり》が、チャオ内侍の手で下ろされた。

 シャオレイはゼフォンに抱かれながら、耳の奥に残る、佩玉が砕けた音を感じていた。
(泣いちゃだめ。
そんなことしたら陛下の怒りを買うわ……!
生き延びて、フェイリンの元に戻るのよ……)

 ゼフォンからの愛を悦《よろこ》んでいた記憶は、シャオレイには確かにあった。
 だが今は――何も感じていなかった。それどころか、静かな焦りが彼女を襲っていた。
(悦《よろこ》んでいるふりをしなきゃ……。
青楼にいた頃は、演技なんて簡単にできたのに――)
 シャオレイは知っていた。ゼフォンが、理性によって自制しているだけのことを。

 ゼフォンの理《ことわり》に反する者は、即座に排除される。
 それをシャオレイに教えてくれたのは、冷宮の廃妃たちと、そこで過ごした過酷な日々だった。

(フェイリン……フェイリン――!
どうしたらいいの……私……)
 シャオレイは信じたかった。
 以前のように、どこからともなくフェイリンが現れて、シャオレイを救ってくれると。――あの、無愛想な顔で。いつものように偉そうな口調で。

 静けさは残酷にも、シャオレイの祈りを飲み込んでいった。

(私、いつからこんなにか弱くなったの?
乱暴な軍人に抱かれたときだって、平然と媚びを演じていたのに……。
――きっとあなたのせいよ、フェイリン。
あなたがあんまりにも優しくて強いから……私、安心して弱さを出せるようになってしまった)

< 419 / 492 >

この作品をシェア

pagetop