小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第84話 思い出に抱かれて(3/6)


 だが、シャオレイが脚をゼフォンに撫でられたそのとき――ある記憶が彼女を一瞬で包み込んだ。

 シャオレイの脚を愛おしそうに撫でていた、フェイリンの唇。
 シャオレイの名を、すがるようにささやくフェイリンの声。
 シャオレイを射抜く、欲と願望の混じったフェイリンの瞳。

 それは、かつて昼の光の中で味わったふたりだけの幸福だった。

 そして今、シャオレイが感じているぬくもりは“フェイリン”だった。
(ああそうね……私の愛しい夫は、あなただわ)
 ゆっくりと、シャオレイの体は溶けるようにほどけていく。それは、ゼフォンの愛撫に対するものではなかった。
 シャオレイの心ごとすべてが、フェイリンを求めて甘く震え、熱を帯びている。
 もう、シャオレイに演技などいらなかった。
 シャオレイは目を閉じ、誰にも聞こえない声でつぶやいた。
(――フェイリンったら、しょうがない人。
杖刑を受けたばかりなのに動かすから、傷が裂けちゃって……。
お医者様に怒られちゃったじゃないのよ……もう)

 ゼフォンの耳を、シャオレイのさえずりがくすぐっていた。
 ゼフォンは寵姫を取り戻したことで、心が満たされていた。
 だが、ゼフォンの心の奥には、かすかな違和感があった。
(腕に抱くこの体は、確かにカナリア――いやルリなのに、以前とは何かが……)
 ゼフォンは、考えるのをやめた。そして、シャオレイの額の小鳥へそっと口づけをした。

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