小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第86話 檻の中のさえずり(5/6)


 シャオレイは、ゼフォンの胸の中で歌っていた。それは、ゼフォンがかつて最も好んだ――忠誠を讃える旋律だった。
「……天の高みの 光たる……
……世を照らし わが心をも射る……
……影に咲く身も 仰ぐはひとつ……」

 ゼフォンの視線が、シャオレイの髪に落ちた。
 そのとき、ゼフォンの記憶の底からよみがえったのは――香り袋に納められていた髪の房。
「なぜ……予に髪を求めなかった?」
 ゼフォンの声に、イラ立ちが含まれていた。
 ゼフォンは、シャオレイを許せてはいなかったのだ。

 歌を止めて、シャオレイは静かに答える。
「――それは、決して望んではならない掟でございましたので……」

 ゼフォンの目は、裏切り者を見るようだった。
「ならばなぜ、予にそなたの髪を渡さなかった……?」

「それは――」
 シャオレイは、慎重に言葉を選んで答えた。
「陛下とは、夫婦としてありたかったのです。
――臣下ではなく」

 その言葉に、ゼフォンの顔がこわばった。

 皇帝へ髪を贈る行為は、“忠誠”を誓うものだった。愛を忠誠に変えたくなかったシャオレイは、渡せなかったのだ。

「そなたは予の“妻”であることを望みながら、忠誠を捧げるのは嫌だったと……?
それで、夫婦のつもりだったと申すか……」
 低く漏れたゼフォンの声には、怒気ではなく、“理解できない”という困惑が混じっていた。
「予は――そなたを寵妃にしたのだぞ……。
そなたを庇護し、高い位を与えた。
……それでも、なお予と“対等”でいたかったと?」
 ゼフォンの声は、静かで冷たかった。

< 431 / 492 >

この作品をシェア

pagetop