小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第89話 密室の三角関係(3/6)

 フェイリンは、シャオレイから目を離さないまま、後ろへ一歩よけた。

 シャオレイは、フェイリンの瞳に鈍く宿ったままの殺気を感じ取って、不安になっていた。だが、静かにゼフォンへと歩み寄った。
 それから盆を床に置き、ゼフォンのはだけた中衣《ちゅうい》の紐を結び、晒されたままだった胸元を隠した。
 シャオレイは、ゼフォンへ言った。
「陛下……喉が渇いているかと存じます」
 それから、碗の水をひと口飲んだ。毒が入っていないことを示すためだ。
「どうぞ、お召し上がりを」
 シャオレイは、碗をゼフォンの口元につけて飲ませた。

 ゼフォンは何口か飲み、やがて首を振った。

 シャオレイは碗を下げ、粥をレンゲ匙ですくい、ゼフォンの目の前で毒味をした。
「陛下、どうぞ……」

 シャオレイが差し出した粥を、ゼフォンは素直に口に運んだ。

 シャオレイに平然と世話をさせるゼフォンの様子が、フェイリンの殺意へ、さらに油を注ぐ。
(死へ追い詰めた女をまた囲うなど、よくできるな……)
 そのとき、フェイリンの頭の片隅にあった理性がささやいた。
(――いっそここで殺すか?
……こいつがいなくてもシン統領は勝つし、帝位には都にいる第2皇子がつけばいい)
 フェイリンの左手が、腰の刀の柄を握っていた。

 その動きに気づいたゼフォンが、フェイリンへ鋭い目を向けた。怒りではなく、あざけりの混じった視線だった。
(女を巡っての殺意か。
滑稽な――)

 ゼフォンの視線の意味を、シャオレイもすぐに察した。
 シャオレイは、振り返ってフェイリンを見つめた。そのまま首を小さく、だが強く横に振った。
(――殺しては、ダメ)

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