小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第89話 密室の三角関係(5/6)


 寝床を作り終えて、フェイリンは慇懃無礼に言った。
「ご不便とは存じますが、こちらでお休みください」

 ゼフォンは侮蔑の表情を浮かべながら、「やはり、杖刑100打にしておけばよかった」と言った。

 フェイリンの瞳に、わずかに殺気が宿る。

 再び、ピリついた空気がシャオレイに届いた。
(また――!)

 さっきゼフォンを縛るのに使った縄の残りが、フェイリンの目に入る。
 そのとき、ひとつの考えがフェイリンに浮かんだ。
(“ケダモノ”は縛り付けておかねば……。
シャオレイへ悪さをできぬように)
 フェイリンは「失礼いたします」と言い、ゼフォンの後ろ手の縄を、貯蔵棚の脚に結びつけた。――まるで、馬を繋ぐように。

「……何の真似だ」

 ゼフォンの問いに、フェイリンは答えない。その代わりに、言ったのは――
「陛下……たしか、“ビン・ユエン”なる者は処刑されて死んだはず。
そして、ヤン妃様もお亡くなりに。
我が妻は、少しばかりその方に似ているかもしれませんが。
――あまり執着なされますと、臣下や民から御乱心と誤解されましょう」
 それは、フェイリンの宣言だった。“俺の女に手を出すな”という。

 だが、ゼフォンは鼻で笑った。
「ざれ言を。あれは予の女だ」

「冷宮に閉じ込めて瀕死にさせておいて、よく言えるな……」
 フェイリンの語気は強くなり、左手は刀の柄《つか》を握っていた。

 ゼフォンは、さげすんだように言い返す。
「ユン・フェイリン、掟は絶対だ。
それが宮廷の理《ことわり》というもの。
……平民には分かるまい」

「――それなら、ラン・ジュンが帝位につくのと大差ないな」
 フェイリンの言葉が、空気を裂いた。


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