小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第90話 再来する悲しみ(4/6)




 星と月が、優しく巡幸船団を照らしていた。光のすぐ隣にいる闇が、船に起きた惨事をそっと覆い隠している。

 だが、船内の貯蔵庫にいるシャオレイたちには、それを知る由も無かった。

 床に敷いた布の上で、シャオレイはフェイリンの膝を枕に寝ていた。
 夜明けの気配を告げる鳥のさえずりが、シャオレイの耳に届く。シャオレイはしばらくまどろんでいたが、ふと視線を感じ、見上げた。

 ――光るフェイリンの瞳が、シャオレイをとらえていた。
 フェイリンは、眠ってはいなかった。夜通し、自分の胸の中に積もるものを見つめていたのだ。

 シャオレイは、フェイリンへ手を伸ばす。シャオレイの細く白い指を、彼がつかみ、頬寄せ、口づけた。
 ようやく取り戻した愛に、シャオレイは安堵していた。

 シャオレイがゆっくりと身を起こすと、不意に空腹をおぼえた。

 フェイリンが「食べろ」と、焼餅《やきもち》を差し出した。
 受け取った焼餅を、シャオレイはかじり始めた。

 シャオレイが食べ終えると、隣に座るフェイリンがぽつりと言った。
「ここに来る途中、大河の霧の中に金色の光を見た。
――そなたの小鳥が、導いてくれたんだ、俺を……」

 昨日の夕暮れの出来事がシャオレイの頭によみがえり――驚いた。
(ああ……あれは、そういうこと?)
 シャオレイは、そっと額の小鳥を撫でた。
(じゃあ小鳥は、ずっと私の味方だったの……?
冷宮で死のうとしたとき、小鳥が疼いたのは――私を止めるため?)
 それから、フェイリンの肩へ頭を預けて言った。
「小鳥は、あなたのことも気に入ってるのよ……ちゃんと」
 小さな笑い声が、シャオレイから漏れる。

< 451 / 492 >

この作品をシェア

pagetop