小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第92話 仇討ちの結末(5/7)


 そんなシャオレイの姿を、ゼフォンは静かに見下ろしていた。

 かつて、シャオレイは命をかけてゼフォンを守ろうとした。
 だが今、シャオレイの口から絞り出されたのは、他の男――フェイリンの名だった。

 ゼフォンを求め、彼のために生きた女は、もういない。その現実が、ゼフォンの胸の奥をゆっくりと裂いていった。
 それを認めた瞬間、何かが決定的に終わる気がして――ゼフォンは、すかさず思考を切り替えた。
(……ならば、掟をもって裁くのみ)

 そして、ゼフォンはそばにいるウェン大将軍へ手を差し出す。
「――国を乱す賊は、刃で正す」
 その声には、皇帝としての威厳がにじんでいた。
 ゼフォンの中にあった“私情”は、今や“国家の理《ことわり》”に姿を変えていた。

 ウェン大将軍は腰帯から刀を鞘ごと外し、ゼフォンへ差し出す。

 その瞬間、シャオレイを絶望が包む。
 甲板へ突っ伏しても何も変わらない――シャオレイはそう思いながらも、なすすべがなかった。
(また、私の愛した人を救えないの……!?
何のために生まれ変わってきたの……?
私のしたことは無駄だったの……?)

 ゼフォンが刀を受け取ろうとした――そのときだった。

「陛下、お召し物を……」
 急ぎ足で、内侍が皇帝の衣《ころも》を持ってきた。
 内侍がゼフォンの披風《ひふう》を外すと、内衣があらわになった。ゼフォンを護衛している羽林軍は、顔をそむけている。

 ゼフォンは、追い詰められているフェイリンから目を離さないまま、無言で腕を広げた。

 中衣《ちゅうい》の袖が、ゼフォンの腕を滑っていく。

 ――その瞬間、シャオレイの額の小鳥がチリッと疼いた。
 シャオレイが顔を上げて内侍の顔を見た瞬間、息をのんだ。
(ラン氏……!)

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