小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第93話 前世の涙(4/8)




 敵兵の死体は、次々と船縁《ふなべり》から大河へ投げ落とされていた。

 紅い色が、水面に薄く広がっていく。

 一方で、禁軍の兵たちの亡骸は布で包まれ、丁重に運び出されていった。

 御座船《ござぶね》に残って指揮をするゼフォンの元へ、禁軍のシン統領がやって来た。シン統領はひざまずき、深々と礼をした。

 ゼフォンが「なぜ予に知らせなかった?」と言うと、シン統領は答えた。

「12月の乱の再発を恐れ、警備を厳《げん》にいたしました。
これだけの兵を表立って増やせば、民に不安を与えます。
それを恐れ、陛下にご報告申し上げず、伏せたのみにございます」

「ユン・フェイリンが接触したと聞いたが」

「情報に基づき、独自に再調査いたしましたところ、謀反の確証は得られず……。
万一、誤報であれば、混乱を招くと判断いたしました」

 ゼフォンはしばらく沈黙した。
「――結果が出ていなければ、貴様の首は飛んでいたぞ」

「承知の上でございました」

 ゼフォンは息をつき、シン統領へ下がるように手で合図した。

 シン統領が独断で藩鎮《はんちん》を動かした件は、こうして不問とされた。

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