小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第94話 二度めの別れ(3/8)
シャオレイの裙《くん》が甲板に落ちると、ゼフォンは目を見開いた。
「私……あんな目に遭っても、あなたを愛し続けられるほど……強くないの。
――ごめんなさい」
シャオレイはそう言って、衣《ころも》を1枚ずつ脱いだ。
ゼフォンはかすれる声で、「何をしておる……」と言った。
周りの衛兵たちは、シャオレイから顔をそむけている。
シャオレイは、靴までも脱ぎ捨てて、中衣《ちゅうい》姿になった。それは、シャオレイが巡幸船へ連れてこられたときに着ていた衣《ころも》だった。粗末な木綿だったが、フェイリンと共に過ごした日々の思い出が、詰まっている。
シャオレイは、やわらかく――だがきっぱりと言った。
「陛下から賜った物は、すべてお返しいたします」
ゼフォンにとって今のシャオレイは、“皇帝を振り回すワガママな寵姫”でしかなかった。
だが、不意にある仮説に行きついた。
(……ユン・フェイリンの入れ知恵か?)
ゼフォンは息をついて、言った。
「分かった、ユン・フェイリンにも恩賞を授けよう。
あやつにも予の命を救った功績がある。
右羽林軍《ううりんぐん》副将軍に、任命だ」
シャオレイは、首を横に振った。手元に置いたフェイリンをゼフォンは合法的に消す――それをシャオレイも分かっていた。
応じないシャオレイに、ゼフォンにイラ立ちが湧く。
だが――
「まったく……」
ゼフォンは口の端に、わずかに笑みを浮かべた。それは、優しさでも皮肉でもなく、“怒りのごまかし”だった。
そしてゼフォンは、静かにシャオレイへとどめを刺した。
「ユン・フェイリンを、そなた付きの内侍にしてやってもよい」
それは、あまりにも軽やかに口にされた選択肢だった。シャオレイの背すじが、凍った。
ゼフォンは続けて言った。
「それほどに求め合うなら、いっそ離さずにおいてやろう。
ルリの、最も近くに。
――男であることを、二度と許さぬかたちでな」
ゼフォンの声は静かだった。だからこそ、その残酷さが際立った。
シャオレイの裙《くん》が甲板に落ちると、ゼフォンは目を見開いた。
「私……あんな目に遭っても、あなたを愛し続けられるほど……強くないの。
――ごめんなさい」
シャオレイはそう言って、衣《ころも》を1枚ずつ脱いだ。
ゼフォンはかすれる声で、「何をしておる……」と言った。
周りの衛兵たちは、シャオレイから顔をそむけている。
シャオレイは、靴までも脱ぎ捨てて、中衣《ちゅうい》姿になった。それは、シャオレイが巡幸船へ連れてこられたときに着ていた衣《ころも》だった。粗末な木綿だったが、フェイリンと共に過ごした日々の思い出が、詰まっている。
シャオレイは、やわらかく――だがきっぱりと言った。
「陛下から賜った物は、すべてお返しいたします」
ゼフォンにとって今のシャオレイは、“皇帝を振り回すワガママな寵姫”でしかなかった。
だが、不意にある仮説に行きついた。
(……ユン・フェイリンの入れ知恵か?)
ゼフォンは息をついて、言った。
「分かった、ユン・フェイリンにも恩賞を授けよう。
あやつにも予の命を救った功績がある。
右羽林軍《ううりんぐん》副将軍に、任命だ」
シャオレイは、首を横に振った。手元に置いたフェイリンをゼフォンは合法的に消す――それをシャオレイも分かっていた。
応じないシャオレイに、ゼフォンにイラ立ちが湧く。
だが――
「まったく……」
ゼフォンは口の端に、わずかに笑みを浮かべた。それは、優しさでも皮肉でもなく、“怒りのごまかし”だった。
そしてゼフォンは、静かにシャオレイへとどめを刺した。
「ユン・フェイリンを、そなた付きの内侍にしてやってもよい」
それは、あまりにも軽やかに口にされた選択肢だった。シャオレイの背すじが、凍った。
ゼフォンは続けて言った。
「それほどに求め合うなら、いっそ離さずにおいてやろう。
ルリの、最も近くに。
――男であることを、二度と許さぬかたちでな」
ゼフォンの声は静かだった。だからこそ、その残酷さが際立った。