小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第95話 歩み始める夫婦(4/7)


 盃をおろし、ようやくふたりは目を合わせた。

 不意にシャオレイが、小さく笑い声を漏らす。

 フェイリンが眉を上げた。
「なんだ……?」

「義兄妹《きょうだい》の契りを思い出したの」

「……忘れろ」

「あら、私はけっこう楽しかったわ。
優しくて頼りになって……本当の兄さんみたいで――」

 不意に、フェイリンがシャオレイの唇をふさいだ。
「俺は、そなたの”夫”だろう?」

 シャオレイは、はにかみながらうなずいた。

 シャオレイの視線は、フェイリンの髪に止まった。

 その白髪《はくはつ》は結い上げられ、金の小冠《しょうかん※》で飾られていた。 [※髷を飾る、かんざし付きの小さな冠]
 それからシャオレイの目線は、フェイリンの婚衣にゆっくりと落ちた。袖と襟が緑色に縁取られ、深紅の生地を金糸の瑞雲《ずいうん※》がただよい、フェイリンの鋭さを柔らかく包んでいる。 [※めでたいしるしの雲]

 フェイリンはもう、目立たないように髪を黒く染める必要も、黒衣で闇に潜む必要もなかった。

 そっと、シャオレイはフェイリンの胸元に触れた。
(この人が、私の――夫)

 フェイリンもまた、盃を置き、シャオレイを見つめていた。

 シャオレイのつややかな髪には、絹の芍薬が飾られていた。彼女の髪を彩るかんざしは、フェイリン自らが彫ったものだ。
 そこから垂れ下がる歩揺《ほよう》は、シャオレイが紅いガラス玉をつなげて作った。
 シャオレイは、金糸で刺繍された緑色の長衣を羽織っている。
 帯紐からは、佩玉のかけらが吊るされていた。それはフェイリンから託され、ゼフォンに割られてしまったものだ。かけらには白い小さな玉がいくつもつながれ、ろうそくのあかりにきらめいている。

 今フェイリンの目の前にいるシャオレイは、青楼の女でも、皇帝の女でもない。

(俺の――妻だ)

 ふたりの視線は、再び絡まり、ほどけなかった。

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