小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第95話 歩み始める夫婦(6/7)
◆
ビーシェンの大通りから一歩入った小さな通りに、一軒の香屋《こうや》があった。そこには、“雲蕾軒《ユンレイけん》”の看板が掲げてある。
店の中は、落ち着いた香《こう》の匂いが漂っていた。
天井から吊るされた灯籠には、昼でも淡い光をともしている。窓の少ない店内を、やさしく照らしていた。
壁には、“今月のおすすめの香”の札が掛けられていた。その横には、シャオレイが書いた、季節の詩が額装されている。
シャオレイは、壁の棚の小さな引き出しから香壺を取り出し、勘定台《かんじょうだい》に乗せた。女性客と喋りながら、香の調合を始める。
反対側の壁には、薬の品書きが貼られている。
奥の調剤場では、フェイリンが働いていた。
フェイリンは、明るい亜麻色の衣をまとい、客の注文した胃薬を黙々と合わせていた。さじで薬の分量を測りながら、秤の皿に落としてゆく。
シャオレイの朗らかな笑い声につられて、男が冷やかしにのぞきにきた。それを、すかさずフェイリンがにらみつけた。
気まずそうに男が去ったあと、シャオレイが苦笑して言った。
「そんなににらまなくても……」
「必要なことだ」
フェイリンはそう言って調剤を続けた。
その横顔を、シャオレイはやわらかな目で見つめていた。
◆
ビーシェンの大通りから一歩入った小さな通りに、一軒の香屋《こうや》があった。そこには、“雲蕾軒《ユンレイけん》”の看板が掲げてある。
店の中は、落ち着いた香《こう》の匂いが漂っていた。
天井から吊るされた灯籠には、昼でも淡い光をともしている。窓の少ない店内を、やさしく照らしていた。
壁には、“今月のおすすめの香”の札が掛けられていた。その横には、シャオレイが書いた、季節の詩が額装されている。
シャオレイは、壁の棚の小さな引き出しから香壺を取り出し、勘定台《かんじょうだい》に乗せた。女性客と喋りながら、香の調合を始める。
反対側の壁には、薬の品書きが貼られている。
奥の調剤場では、フェイリンが働いていた。
フェイリンは、明るい亜麻色の衣をまとい、客の注文した胃薬を黙々と合わせていた。さじで薬の分量を測りながら、秤の皿に落としてゆく。
シャオレイの朗らかな笑い声につられて、男が冷やかしにのぞきにきた。それを、すかさずフェイリンがにらみつけた。
気まずそうに男が去ったあと、シャオレイが苦笑して言った。
「そんなににらまなくても……」
「必要なことだ」
フェイリンはそう言って調剤を続けた。
その横顔を、シャオレイはやわらかな目で見つめていた。