小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第13話 羽の休まる場所(5/6)


 ”抱きしめる”というフェイリンの行為が、シャオレイにとって正解だった。
 フェイリンも、小さく安堵する。
(――ああ、安心したのか)

 シャオレイは、フェイリンへ自分の心をさらけ出したのではない。不意にかけらがこぼれてしまっただけだ。

 ゼフォンにすら見せないはずだった小さなかけらが、フェイリンにだけ落ちてきた。それが、フェイリンには何よりも愛おしかった。
 シャオレイの心が今この腕の中にある――その確信に、フェイリンの全身が静かに粟立つ。情欲のままにシャオレイをむさぼったときとは、遥かに違う感覚だった。

 フェイリンの声が、シャオレイの心に不思議と沁みていた。
(慰めてくれたのかしら……?
それよりもどうしてこんなに落ち着くの……?
無愛想だし、物騒なことを言っているのに……)
 ゼフォンとは違うフェイリンのあたたかさを、じんわりと噛みしめていた。

 だが、シャオレイはハッとして、そっとフェイリンから離れた。
(何してるの私。
“対価としての体”を差し出すわけじゃなくて、心を委ねるなんて……。
前世で毒殺された恐怖に負けていただけよ。
他の男に安らぎを感じるなんて――それだけは絶対にだめ。
私は、ゼフォンの女なんだから)

「……ありがとう。
でも、”幼稚な嫌がらせ”くらいでシュエン妃を消さなくていいわ」
 シャオレイには本気でそのつもりはなかったから、そう言った。

 だが、フェイリンにはシャオレイに一線を引かれたように感じた。
「消したい奴がいたら言え」

「そんなの決まってるわ……。
――ねえ、本当に”七夕の宴”で皇后を暗殺するの?」

「何を今さら」

「どうしてそんなに焦るの?」

 焦る。
 フェイリンは、思いがけない指摘に驚いた。
(俺は焦っているのか?
――いや、機会を逃さず、間髪入れずに攻めているだけのはず)

 フェイリンはいつのまにかシャオレイの髪を、手の中で滑らせていることに気づいた。彼女は拒まなかった。
(――この女のせいかもしれんな。
ずっとそばにいたら、仇討ちなど忘れて、こいつに溺れてしまいそうだ……)

< 67 / 492 >

この作品をシェア

pagetop