忘れられなかった初恋が、40歳で叶ってしまった
「ごめんね、信ちゃん。今日は朝から頭痛が酷くて、また明日にしよ?」

辛そうに頭を押さえながら、絵奈は信一の手を軽く握った。
「そっか、、大丈夫?絵奈頭痛持ちだもんね。こっちこそしんどい時誘ってごめんね。」
「ううん、大丈夫。私こそ最近あんまできなくて…、ごめんね。」
「大丈夫だよ。また明日誘っちゃうかもだけど。しんどかったら断って。」

信一は絵奈を抱きしめながら、絵奈の唇に優しくキスをした。


部屋が暗くて良かった。
「明日また誘う」の言葉を聞いた瞬間、絵奈は思わず顔をひきつらせてしまったからだ。


「…最近さ、胡桃が『弟か妹が欲しい』って言うんだよね。この前絵奈の実家でも、奈津美ちゃんの子供たちをずっと羨ましそうに見てたでしょ?
俺も結婚する時にも話してたけど、子供は2人くらいが理想かなって思うんだけど。
絵奈はどう思う?」

「そうだよね、確かに胡桃のために、もう1人居てもいいかもね…」
「絵奈もそう思ってくれて良かった!」

信一が間髪入れず、嬉しそうに絵奈の手を握った。
絵奈は「でも…」と続けるつもりだったが、絵奈も2人目の子作りに同意した事になってしまったのだ。

「色々ネットで調べたんだけど、基礎体温を付けると妊娠しやすい日が分かるらしくて。その日にすれば良いんじゃないかな?」

暗闇でも信一の目が輝いているのが分かる。

「信ちゃん、詳しいね!基礎体温の事、私も知ってたよ」
絵奈は棒読みにならないように抑揚をつけて答えた。コールセンターで働いていて良かったと思った。

「なんだ!絵奈も知ってたんだ。もっと早く言ってくれたらよかったのに。…2人目、楽しみだね。男の子と女の子、どっちが良い?」

「うーん、やっぱうちは姉妹仲良しだから女の子かな?」
「マジか。俺は一緒にキャッチボールとかやってみたいから男の子かな?まぁ、どっちでも嬉しいけど!」

信ちゃん、野球やったっけ…?
いや、そんな事より。
私、2人目作らないといけないの…?

2人目の子どもの話をしているうちに、信一は絵奈を抱きしめながら息を立てて眠りについた。



祐太郎との関係が始まってから、絵奈は信一との行為が億劫になっていた。

女って、そんなものだ。感情で生きてる証なのだろうか?
好きな人が出来ると、その人以外との行為を気持ち悪いと感じてしまう。夫であっても。

ただ、既婚者で養って貰っている以上ある程度応じる義務はあると思う。ましてや、2人目の子作りなんて、結婚時に2人で話し合った約束みたいなものだ。

応じない理由が無い。

私はもう、祐太郎君に会えなくなるのかもしれない。
身体の関係は無かったとしても、さすがに妊娠しながら会う気にはなれない。
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