結婚の決め手は焦げた玉子焼き!?黒豹御曹司は愛する秘書を逃がさない
 すぐに『10時に駅でいいか?』と返信が届く。
 
「営業部はヒマなようだ」
「そうみたいです」
 沙紀はパソコンを閉じると、手帳とタブレットを持ちながら立ち上がる。

「暁良さん、人事部と会議のお時間です」
「わかった」
 夏目は秘書室に残り、暁良と沙紀だけで会議室へ。
 少しずつ秘書の仕事を任せてもらえるようになった沙紀は、早く一人前になれるようにがんばろうと決意を新たにした。

    ◇

「沙紀!」
「あ、ごめん。お待たせ」
 土曜10時。今まで時間通りになんて来なかった大輝が5分前に来ていることに沙紀は驚いた。

「どこに行く?」
「行きたいお店があるんだけれど、いい?」
「いいよ」
 今までは私が行きたい店なんて却下だったのに、今日は行ってもいいんだ。

「ネクタイ?」
「うん」
 ここは夏目に教わったブランドの店。
 そんなに広くない店内にずらっと並ぶネクタイが圧巻だった。
 もしかして俺へのプレゼント? なんて勘違いしていそうな大輝の顔は少し嬉しそうだ。

「彼は少し髪が明るいので、こちらのネクタイはいかがでしょう?」
 大輝のネクタイを選んでいると勘違いした店員に、沙紀は気まずそうに微笑んだ。

「すみません、贈り物で。彼のじゃないんです」
 ショックを受けていそうな大輝の顔を見ることができたし、今日の目的はほぼ達成かな。
 あとは暁良のネクタイを買って帰れば任務完了だ。

 私って性格が悪かったんだなと、今さら自分を分析する。
 残念そうな大輝の顔を見てスカッとしてしまったなんて誰にも言えないなと思いながら沙紀は近くのネクタイを手に取った。
 
「大変失礼いたしました。どんな方への贈り物でしょうか?」
 沙紀はスマートフォンで暁良の写真を見せながら、店員とネクタイを選ぶ。

 大輝はネクタイの価格に「マジか」と呟いた。

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