結婚の決め手は焦げた玉子焼き!?黒豹御曹司は愛する秘書を逃がさない
「まず、IT部の八王子さんですが、私のパスワードを勝手に他人に教えたのは許せませんが、彼も騙された一人だと思います。ですので、彼はIT部での再教育を希望します」
「一年間、彼には教育係をつけ再教育を実施します」
 IT部長の回答に、暁良は「わかった」と頷く。
 
「次に、営業部の加賀さんですが。弁護士さん、就業時間内のサボり行為は『労務提供の債務不履行』に該当しますよね?」
 ようやく出番が来た弁護士は、労働契約法第3条第4項と第6条を読み上げ、社員は、会社に対して「労務を提供する」義務を有することを説明する。
「では減給と、半年間の内勤を提案します」
 思ったよりも軽い罪に、大輝のホッとした表情が見えた。
 人事部長が書類の中から減給の書類を取り出す。
 
「減給は何割にしましょう?」
「営業部長に減給額の提示をお願いしたいです。本来、加賀さんが営業に行った場合に取れたであろう契約金額を算出し、決めてください」
「わかりました。本日中には回答します」
 元上司にこんなお願いをするなんて、ごめんなさい。
 沙紀と目が合った営業部長は任せておけと笑ってくれた。
 
「最後に経理部の上野さんですが……」
「やだぁ。私に大輝を取られたからって仕返しするなんて~」
 大輝を取られたに反応するのは、私と大輝が付き合っていたことを知っている営業部長だけ。
 他の部長たちは初めて聞く事実に気まずさを見せた。
 
「弁護士さん、彼女の罪を教えてください」
「彼女はまず他人のIDとパスワードを入手し使用した不正アクセス禁止法違反、なりすましメールを送付した電子計算機使用詐欺罪、そして民法の取引先の信用を毀損した無形損害にも該当します。これにプライバシー侵害や名誉毀損罪の追加も可能です」
 弁護士さんの説明は専門用語ばかりで難しいけれど、刑事でも民事でも罪ということだ。
 
「私は上野さんの懲戒免職を希望します」
「男取られたからって、そんなの酷くない? 別に大輝なんて返すし。私の本命はCEOだし」
「今回なりすましメールを送られ、信用を無くした取引会社の年間売上金額は2億です」
 営業先のリストを過去10年分、取引先別に集計していたから知っている。
 今回、心愛がメールを送ってしまった相手は先代CEOがずっと大切にしていた取引先だ。
 
「会社に大きな損害を与えた以上、個人の恨みとは関係なく、彼女に罪を償わせるべきだと判断します」
 どうでしょうかと部長たちに尋ねると、出席していたすべての部長が頷く。
「……2億ってまさか」
「加賀さんの営業先です」
「だからもう取引しないって……」
 そういうことかと納得した大輝は左手で目元を覆いながら大きく息を吐いた。
 
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