結婚の決め手は焦げた玉子焼き!?黒豹御曹司は愛する秘書を逃がさない
「なんなの? 大輝を返すって言ってるでしょ!」
「そういう問題じゃないんだ、心愛。おまえ、とんでもないことをしたんだぞ」
「ちょっとログインしてスケジュール消しただけでしょ。メールだってそんな面倒な仕事やりませんって書いただけじゃない!」
 ちょっとした悪戯でしょと不貞腐れる心愛に、その場の全員溜息をついた。
 
「本日付で経理部の上野心愛を懲戒解雇、経営部の加賀大輝を減給、IT部の八王子は戒告で。人事部長、手続きを頼む」
「はい、CEO」
「なんで私が懲戒解雇なのよ! 大輝とやり直したいならそうすればいいじゃん。ちょっと遊ぶくらい許しなさいよ」
 会議室の机を叩きながら沙紀に抗議する心愛に、沙紀は肩をすくめた。
 
「上野さん、さっきからずっと誤解しているようだけど……」
 沙紀は右手の薬指に光る婚約指輪を心愛に見せつける。
 これは自分の給料ではとても払いきれない、恐ろしい値段の婚約指輪だ。
 
「私、婚約者がいるから、加賀さんと今回の処分は関係ないですよ」
「あははっ、見栄張って。どうせ自分で買った指輪なんでしょ。相手なんていないくせに」
 騙されないと笑う心愛が絶望するのは三秒後。
 全員の前で引き寄せられキスをされた沙紀は真っ赤な顔に。
 
「暁良様、皆様の前ではおやめください」
 夏目さんの冷静な注意も恥ずかしすぎる!
「式は来年だ」
 しれっと部長たちに報告する黒豹のようなCEOと、真っ赤な顔で口をパクパクさせた秘書の結婚が社員たちに伝わるのは早かった。

    ◇
 
『結婚の決め手は焦げた玉子焼き』
 社内報にそんなことまで書かれた沙紀は恥ずかしくて社内を歩けないと訴えたが、黒豹のような男は満足そうに笑っているだけだった。
 せめて『焦げた』だけでも内緒にしてくれればいいのに。
 料理が下手だと思われた沙紀は、同期や山﨑から婚約祝いに料理本をもらった。
 
 一年後、無事に結婚式を終えた二人は社内でも仲睦まじい夫婦として社員たちの憧れに。
 会社の信用も先代CEOと暁良のおかげで取り戻し、順風満帆。
 
 そして二人の息子がいずれこの会社を継ぐのはもう少し先のお話――。

 END
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