蒼銀の花嫁 〜捨てられ姫は神獣の番〜
「共に行きましょう。……王族としてではなく、あなたと私として」
「セレナ……」
「この国を守るためじゃない。わたしたちの未来を、選び取るために」
そして、ふたりはその丘を下り始めた。
まだ何も決まっていない未来へと、確かな歩幅で。
峠を越えた先にある戦の前線拠点——ルグレ砦は、冬を思わせる空気に静まり返っていた。
石造りの堅牢な城壁と、その中に広がる兵たちの陣。朝もやの中に、剣の金属音や鎧を整える音が重く響いている。
セレナとアグレイスが到着すると、数名の近衛がすぐに駆け寄って頭を下げた。
その中には、幼少期からアグレイスに仕えてきた腹心の騎士、カディスの姿もあった。