蒼銀の花嫁 〜捨てられ姫は神獣の番〜
「お迎えに上がれず、申し訳ありません。殿下、妃殿下」
「無事でいてくれたのなら、それでいい。皆の士気は?」
アグレイスの問いに、カディスは静かに頷いた。
「兵は、主君の到着を信じて待っておりました。……ただ、士気が高いというよりも、“不安を押し込めている”という方が正しいかと」
「……そうか」
言葉少なにうなずいたアグレイスの顔には、沈痛な表情が浮かぶ。
彼は王として、戦場に立つ覚悟を固めている。それでも、兵たち一人ひとりに命があると理解しているからこそ、その重みが胸にのしかかっていた。
その横顔を、セレナはじっと見つめていた。
彼の強さも、弱さも、すべてが今この瞬間に滲み出ている。
(この人は、ずっと……“背負ってきた”んだ)
声にならない想いが、胸にこみ上げる。
あの人の妃として、ただ寄り添うだけでいいのか。
彼の痛みや迷いに、もっと深く、共に立ち向かえないのか。