蒼銀の花嫁 〜捨てられ姫は神獣の番〜
セレナは、医療用の帳の隅で一人佇んでいた。
目の前には、明日使う薬草や包帯が整然と並べられている。
彼女はそれを一つ一つ手に取り、指先で確かめるように触れていた。
(何もできないなんて、思いたくない)
この手で救える命が、ほんのひとつでもあるのなら。
明日、血が流れる。
それは確定していて、誰にも止められない現実だった。
けれどその中で、ひとつでも守れるものを——
セレナはそう心に繰り返し、唇を結んだ。
「……こんなところにいたのか」
背後から、優しい声がかけられた。
振り向けば、アグレイスがひとつのランタンを手に持って立っていた。