蒼銀の花嫁 〜捨てられ姫は神獣の番〜
アグレイスは黙って、彼女の肩を抱いた。
「君のために戦う。君と選んだ未来のために。……けれど、俺の命は、もう君のものだ。簡単に手放したりしないよ」
その言葉に、セレナの胸がじんと熱くなった。
「……それに」
彼は小さく笑って、額をそっと彼女の額に寄せた。
「明日を越えたら、約束していた新しい生活が始まる。あれを叶えたいんだ」
「覚えてたの?」
「もちろん。“日常を大切にしたい”って言ってくれただろ? 君が望むものを、一つでも多く与えたい。俺はそのために生きたいんだ」
彼の低く響く声が、セレナの心をやさしく包む。
涙が一粒、彼女の頬を滑った。
それは悲しみでも絶望でもなく、確かな「希望」の雫だった。
「……私、待ってるから。どんな形でも、あなたが戻るのを」
「ありがとう、セレナ」
ふたりは静かに唇を重ねた。
それは、約束であり、祈りであり、誓いそのものだった。