蒼銀の花嫁 〜捨てられ姫は神獣の番〜
 

 その頃、セレナの元には第一陣の負傷兵が運び込まれていた。


 「胸を深く斬られてる! 縫合が間に合わない!」

 「手当の順番を切り替えて! 出血が多い者から!」


 叫び声と血の臭いに満ちる中で、セレナは必死に動いていた。
 手が震えようと、止めることはない。


 「意識を保って。大丈夫、ここは安全。もう大丈夫よ……!」


 流れる汗も涙も、全て振り払う。
 守りたいものがある限り、彼女は止まれない。

 その胸にあるのは、ただ一つの願い。


 (どうか、生きて。みんな、戻ってきて)


 陽はすでに高く昇り、戦場の空気は熱と血に満ちていた。

 王国軍と反乱軍が入り乱れる中、アグレイスは剣を振るい、ひたすら前へと突き進んでいた。

 仲間の悲鳴、地に倒れる兵、崩れる陣形。
 すべてを背負って、彼はただ――アルベルトのもとへ。


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