親友のキミと、あと1ミリの恋
休憩時間になり、私は椅子に腰かけて少し疲れた足を休ませていた。
すると、ふと、視線の先に晴人と谷原さんの姿を捉えた。
「石川くん、お疲れ様! ちょっと二人で模擬店巡りしない?」
谷原さんが晴人に声をかけ、晴人も楽しそうに頷いている。
谷原さん、相変わらず積極的だなあ。羨ましいくらいだよ。
無意識に二人の姿を目で追っていると、谷原さんはごく自然に晴人の腕に自分の腕を絡ませた。
「っ……」
その光景を見た瞬間、私の心臓はぐっと掴まれた。胸の奥に、ずしりと重たい石が沈んだような感覚に襲われる。
私のことなんてもちろん気づきもせず、そのまま二人は並んで人混みの中へと消えていった。
昔みたいに、私が晴人の隣に立つことは、もうないのだろうか。ううん、もしかしたら彼の隣はもう、谷原さんのものなのかもしれない。
そう思うと、胸が苦しくて、呼吸がうまくできなくなる。
周りの賑やかさが、遠い音のように聞こえた。